
日本の森林面積 約2,500haのうち、約4割を占める1,000haが、スギやヒノキなどの人工林となっています。
戦後、住宅の建築に必要な木材を生産するために、育ちやすい針葉樹のスギやヒノキが国家事業として大量に植えられました。
ところが、木材の需要の高まりに対して、木の成長スピードが追いつかず、
1960年より海外から木材を輸入するようになりました。
結果として、安い輸入木材に対して、国産の木材は売れなくなり、林業は衰退しました。
そうして、せっかく植えた人工林は手入れが大変にもかかわらず儲からないため、
切られることなく、放置されてしまいました。
今、こうした放置山林が、環境問題として深刻な問題になっています。
放置山林の問題
人工林の間伐が適切になされないと、林内が暗くなり、林床に日光が届かなくなります。
日光が届かなくなると、森林の下層の植物が育ちにくくなり、生態系が悪化します。
ヤブ化によって根の張りが浅くなり、
地中深くまでの水と空気の浸透が阻害され、
悪循環的に、地下への雨水の浸透が悪くなります。

雨水の浸透が悪い地面では、表流水が増え、さらに表土が流出しやすくなります。
年々、土砂災害や洪水が激化しているのはこのためです。
さらに、雨水が地面に浸透しないということは、地下水が減ります。
地下水が減少することで、川底や海底からの湧水も減少します。
雨水由来の酸素や、土中の微生物によって生成された、植物プランクトンが吸収しやすい栄養塩(キレート化鉄)が、川や海に供給されなくなると、
藻場が衰退したり、魚介類が減少するなど、
水辺の生態系が悪化していきます。

山林のヤブ化は、水源の枯渇にもつながります。
私たちの飲む水や、農業用水も、山の湧水から来ています。
私たちの暮らしの基盤である、水と食べ物
それを支えている山が、今、
人の手が入らなくなったために揺らいでいるのです。
放置された人工林では、根が弱り、枯れて細くなった木が点在します。

枯れた木が倒れ、道を塞いだり
水源を詰まらせる原因にもなります。
昔は、煮炊きに薪を使っていたので、自然と山の木は間伐され、光と風が入る森が保たれていました。
人が山から離れて暮らすようになり、
木が切られなくなり、生態系のバランスが崩れてしまったのです。
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