
日本の国土の7割を占める中山間地域。
その豊かな自然環境の中で、先人たちは農林業を営み、水や食べ物、薪をはじめとした燃料など、資源を享受し、その中で日本の伝統文化が育まれてきた。
しかし現在、過疎化と高齢化によって農林業の担い手が不足し、手入れができなくなった農地や山林 ー 耕作放棄地や放置林が増えている。

もともと農地だったり、林業に使われていた山林は、人の手が入らなくなると、とたんに荒れてしまう。
荒れて草木が無造作に生え、薮となる(以下、ヤブ化という)

薮となった土地では、土地への空気や水の流れがよどみ、
生物も多様性を失う。
さらに、根が混み合って浅くなり、地下への水や空気の浸透が悪くなる。
夏の暑さを和らげる、樹木の力 第2回 ~樹木の蒸散と土中環境のかかわりからさて、樹木の微気候緩和効果について第1回では、砺波平野の屋敷林の伝統的な暮らし方を参考に、夏は涼しく冬は暖かく、強風を和chikyumori.org
地中への水や空気の浸透が悪くなると、土中環境が悪化していく。
山林がヤブ化して風の通りが悪くなり、落ち葉が風でかき出されなくなると、腐葉土が厚くなることで、その下層で有機物の嫌気性分解が起こる。
これによって、土壌のグライ化がおき、
グライ化した土壌では地下に水が浸透しにくくなる。
こうして、山の保水機能が衰えていく。
耕作放棄地でも同様に、ヤブ化によって有機物過多となった土地では、嫌気性分解により土中のグライ化が進む。
グライ化した土壌は還元的な環境なので、土壌中の鉄分が、二価鉄の状態で存在する。

上の写真は、土壌中の鉄バクテリアによるベンガラ(水酸化第二鉄)。
鉄バクテリアは、水中の酸素を使って二価鉄を酸化し、ベンガラ(水酸化第二鉄)を湧出する。
ベンガラの湧出は、土壌環境の指標となる。
つまり、グライ化しているということだ。
(ベンガラの湧出自体は、二価鉄の酸化によるグライ層の緩和によって起きる)

牛が歩くと、土壌中に酸素が供給される。
これによって、グライ化した土壌に酸素が供給され、グライ層が緩和していく。
牛は、草を食べてヤブ化を解消してくれるだけでなく、歩くことで土中に酸素を供給してくれるのだ。
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